見つめるその先に

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ストーブ列車が到着するや私を含む乗客は足早に入る。暖を求め、出来るだけストーブの近くへと座る。
そんな様子を私は少し離れた場所から見ていた。
少しすると駅員がやって来た。私は切符と過固形燃料を手渡す。
「どうぞこちらへ」
ストーブの前の特等席へ案内された。
駅員が私の過固形燃料をストーブへと入れる。亡き妻との幸せな思い出は燃える事で体だけでなく心も温めてくれる。
妻との思い出は大事な過去だ。しかし過去に捕らわれ過ぎては未来を生きる事が出来ない。
だから私は妻との思い出を、過去を固形化し、燃やしてもらうと決めた。
ストーブの窓を覗くと映画のように妻との思い出が映し出される。まるで走馬灯だな。
思い出が燃えてなくなると気持ちが軽くなった。
ありがとう。そして、さようなら。
口の中でそっと呟く。
特等席を離れ、窓の外を見つめると妻が”未練はもうない”と言わんばかりの表情で空へと向かう姿が見えた。
公開:22/04/11 20:33

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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