見つめるその先に

最近の家にはアジがない。
アは妖、妖怪の事。昔は家に妖怪が住み着いているなんて当たり前だった。座敷童や家鳴りはどこの家にもいたが最近じゃ全く見なくなった。
ジは自分、己の事。昔はどの家にも住人の個性があった。家を見ればどんな性格の人間が住んでいるかすぐに分かったが、今ではどいつもこいつも同じような生活していて、見ていて全く面白くない。
だがそんなつまらない生活を見つめる者好きもいてな。誰かって？壁や障子だよ。
昔から言うだろう。壁に耳あり障子に目ありって。耳って漢字もよく見たら目って字が入っているんだ。今の家は昔以上に良くないものに見つめられている事が多い。
それを聞いてお祓いしようとする者もいるがそれは止めた方がいい。
お祓い、つまりは聖者を使うって事だろ。聖の字には目も耳も口って漢字も入っている。
いいか、人の口には戸が立てられない。下手すりゃ壁や障子が見聞きした事、全部ばらされるぞ。