見つめるその先に

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娘は私によく似て、大人になってから取りこぼしが多くなった。
友人。趣味。好物。毎日の忙しさにそれらを置き去りにして、責任ばかりをその手に持った。
中身も確認せず、重荷ばかりを背負わされた。結果、友人は離れていき、趣味や好物は埃を被る。
子供が生まれてからはそれがさらに顕著になった。その両手でしっかりと子供を守る為にさらに多くのものを取りこぼした。
そして、ふと気が付いた。一度責任を下ろしてしまえば、その手は空っぽである事に。
何が好きだったんだろう?何に熱中していただろう?友人とどんな話をしていただろう?
分からなくなり、何もない両手を見つめては怯える娘。その手を私はそっと握る。
大丈夫。貴方の取りこぼしたものは私がちゃんと拾っているから。
かつて母がそうしてくれたように優しく微笑む。娘の手にこれまで取りこぼしたものを手渡す。
それを見た娘の娘も母の取りこぼしたもの手にして母の手を握った。
公開:22/04/11 20:28

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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