消えるシャーペン

俺の名前は平一（たいらはじめ）。「消えるシャーペン」を手に入れた。紙に記憶から消したいことを書くと、書いた瞬間そのことが頭から消えるらしい。試しに「ミサンガ」と書いてみることにした。今後使うことはないと思ったからだ。紙に書いてもその文字は見えない。特殊な芯を使っているらしい。「ガ」の濁点を書き終わったと同時にふわっと不思議な感覚があった。
俺は一体何を書いたんだろう。思い出せないということは本当に記憶から消えているのかもしれない。明日クラスのみんなに自慢してやろう。

「はい、今からテスト始めるぞ。たまに名前書いてないやつを見かけるが、その場合は0点だからな」
まだテストに名前書き忘れるやついるのかよ。ま、俺は開始1秒で書ける名前だからそんなことないけど。
「始め」
合図と同時に俺は名前を書いた。
あ、と思ったときには遅かった。書いた文字が見えない。
俺は初めてテストで0点を取った。