見つめるその先に

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僕の妻は自由な人だった。目を離すといつもどこかに行ってしまう。だから僕はいつも妻を見つめていた。
妻は事故で亡くなった。目を離した隙にいつものようにふらりと出かけ、事故に遭った。
妻は天体観測が好きで毎晩、天体望遠鏡を覗き込んでいた。妻が亡くなってからは僕が望遠鏡を覗き込むようになった。
もしかしたら、星になった妻を見つけられるんじゃないか…そんな事を思って。
ある夜、いつものように天体望遠鏡を覗き込むと図鑑に載っていない星を発見した。試しに問い合わせてみると未発見の星だと言われた。
星の命名権を得た僕はその星に妻の名をつける。
あれはきっと亡くなった妻だと信じ、毎夜穴が開く程見つめ続けた。
それがダメだったのか、妻の名前を付けたのがマズかったのか、数日後、その星は消えていた。星空にぽっかりと穴が空いてしまっていた。
星になっても自由な妻は、僕が目を離した隙にどこかに行ってしまったらしい。
公開:22/04/09 20:20

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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