内診台特急の夜

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妊娠中の妻と一緒にはじめて妊婦健診へ出掛けた。
4Dエコーで立体的に胎児の状態を見る事が出来る。
妻の順番が来て診察室へ入った。
そこには、ラグジュアリーなフカフカの内診台があった。
妻が大きなおなかを出して内診台に座ると全自動で動く。
「おー、凄いな、この内診台!」
「ちょっと、画面見てよ。目と口も動いてる。かわいい。」
「ああ、そうだね。」
夫の和男は胎児の事よりこの内診台の虜になってしまった。
(俺も乗ってみたい)

その夜中に和男は衝動にかられ、気が付けば産科クリニックに忍び込んでいた。
(おお、この触り心地、重厚感がたまらない)
早速、座ってみた。
ゆっくりと回転しながらシュッシュと鳴り始め、蒸気が立ち込めてきた。
(あれ、昼間と違うな)
和男の先には大きな窓の開いた満天の夜空が広がっていた。
内診台は夜空へ向けて、銀河鉄道のように飛び立った。
翌朝、和男の捜索願が出された。
ファンタジー
公開:22/04/10 07:00

ひまわり広場( 神奈川県川崎市 )

産婦人科専門医/指導医
@sanadakuma
tama-himawari3w.com
身体は日々の食事で出来ている。
妊婦さんにも食事の重要性について情報提供しています。
ダイエット中の方々にも食事・睡眠・運動の重要性について情報発信しています。
自身が「愛着障害」であることに気付き、もう一人の自分と上手に共生しています。
自分が、自分の『安全基地』になることが生きていくための拠り所なのかもしれない。
科学的な視点からの表現も交えて、ショートショートストーリーを作っています。

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