歩行者用信号機

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 歩行者用信号機のシルエットにモデルがいることはあまり知られてないと思う。私の初恋の人でなかったら、私だって知らなかっただろう。疲れている時に信号待ちしてると、酸っぱくて苦い思い出が胃酸みたいに込み上げてくる。
 思い切って信号機をオークションで購入し、リレー回路やコンピュータ制御を勉強して自宅で動かせるようにした。赤、緑、点滅、赤、延々の堂々巡りだ。あの頃の私は彼を意識していただけで、告白なんてできなかった。
 何でこんなものが家にあるんだろう。
 信号機を落札するより、SNSとかで今の彼を調べた方が良かったんじゃないか。そういえば彼の名前も思い出せない。しかも陽は落ちて外は真っ暗で、信号機の光だけが不健康に部屋を照らしている。休日が終わろうとしている。
 テーブルの上に車の鍵がある。今から徹夜で運転すれば、実家の卒業アルバムを確認して朝までに戻って来られる。
 部屋の信号が赤に変わる。
その他
公開:22/04/08 20:58

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