シソと誕生日と星空と

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僕はシソが嫌いだ。我が物顔で料理に紛れ込む図々しさが好きになれない。昼ご飯のシソを残し、お母さんの怒声を背に家を出た。なんたって今日は12年に1度の一日中星が見える日。

裏山の広場にはまだ誰もいなかった。僕は芝生に大の字になり、真昼に輝く幾千の星を見上げた。

「一星くん、誕生日おめでとう、待った?」

誕生日、か。12年前の「一」日中「星」が輝く日に生まれたから一星。僕の親も単純だね。

「ありがとう。和子ちゃんはさ、星好き?」

「好きだよ。一生懸命光ってる気がして。」

「一生懸命?」

「うん。私昔いじめられててさ、自分なんて必要ないと思ってた時に星に勇気づけられたの。暗闇の中でも私らしく、図々しく生きてみようって。」

僕はなにも言えなかった。12歳の頭では受け止めきれなかった。ただ、明日からシソは残さず食べてみようと思った。単純な発想だけど、この単純さが僕らしさなんだろう。
ファンタジー
公開:22/04/10 18:00
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