言語空間理論

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 言語空間は湾曲している。従って平行線を辿る議論も、無限の延長の果てには交差する。だが観測上、平行線の議論は常に不毛な結果に終わる。平行線の議論を平行に保つための不断の努力が存在するのだ。
 言語空間の歪みは話題p上を議論が通り、情報量が増加すると発生する。様々な議論が紛糾するこの世界は、議論を平行に保つ平坦な窪地がまだらに点在する。平坦であるほど、演算の負荷が軽減される点に注目しよう。平行線の議論そのものではなく、その隙間を利用する別の意見は、計算上負荷ゼロ、無限大の速度で結論に達し、光速を超え過去へ作用する。
 我々の過去が飛躍する主張によって書き換えられている痕跡は、至る所で発見されている。近い将来、飛躍が指数関数的に過去の情報量を増大させ、言語空間はブラックホール化するだろう。知的営みの全てがシュバルツシルト面の彼方へ隔てられる。
 こうして言語空間は崩壊し、人類の歴史は終わる。
SF
公開:22/04/11 21:00

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