見つめるその先に

0
2

ショーウィンドウの中のバイオリンを毎日眺めに来る少年がいる。
あのバイオリンは高価なもの。きっと、少年にとって憧れの逸品なんだろう。その姿に幼い頃の私を重ねた。
毎日毎日飽きもせずに眺めに来る少年に私は声をかけた。
「もし良かったら弾いてみるかい?」
私の言葉に少年は目を輝かせる。
『いいの!?』
「勿論だとも。でも、とても高価なものだからね。取り扱いには気を付けて」
少年は嬉しそうにバイオリン…の、横にある値札に手を伸ばす。
そしてメモ帳を1枚破ると値段を張り替えた。
『このバイオリン、ずっと売れなかったでしょ?高すぎるんだよ。余りお高く留まりすぎていると、人も寄り付かなくなっちゃうよ』
えっ!?ひくってそっち?
『僕、ずっとこのバイオリン値引きしたかったんだ』
満足げにバイオリンを眺める少年。
私は急ぎ市場価格を確認する。
…あっ、物凄く妥当な値段だ。
公開:22/04/10 20:35

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容