ランドセルの音色

今日は入学式。校門前で新一年生を迎える私の心は晴れやかだった。
私が音楽教師になりたての頃はドとレしか聞こえなかった。校門から黒いランドセルの子と赤いランドセルの子が同時に入ってくるとやや不快と感じるほどだった。でもここ最近は違う。色んな音色が聞こえる。ランドセルの色の数だけ、もっと言うと子どもの数だけ音色はある。鮮やかな音色を背負った彼らが門をくぐると、ほら、聞こえてくる。

ドドレドファラファソ
ドドレドファラファソ
ドドファファララファファララソソファ

いっちねんせーになったーら、ってね。
一見同じ色をしたランドセルでも、多少違う。同じ「ラ」でも440Hzのラもあれば452Hzのラもある。だから完全に綺麗な曲は聞こえてこない。
でもね、それでいいんだよ。それがあなたがあなたである証拠なのだから。ほかの子と周波数を合わせる必要なんてない。
教師生活最終年度の始まりに、私は胸が躍った。