Ⅰ.066 ペルビエの攻防~返還~

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「知らなかったんだね」
 主人の様子を見たキノワは、少し意外そうな表情を浮かべた。
「俺らで示し会わせたと?」
「そうでもなきゃ、こんなお節介できないと思って」言いながら、手元の御宝に視線を移した。
 異国の義賊でも気取ったのか。
「でも違ったんだね。すごいや」
 その賞賛が誰に対してだったのかは分からなかった。少なくとも主人は自分ではないと思ったようで。
「そうだな…」とだけ返した。
 脱力と失望に沈んだ声だった。わたしも似た気持ちが沸き上がっている。言ってしまえば、この勝負は茶番ということだったのだ。我々が、加担したか、利用されたか。違いはそこぐらいしかない。
「…うん。もう満足」
 その空気を変えるようにキノワは声を上げた。
「お兄ちゃん」
「…何だ?」
「これ。返してきてもらえるかな」
 と、黄石の蜂を指した。
「うん。さっき蒼い猫さんが落としていっちゃったんだ」
ファンタジー
公開:22/04/10 18:04
更新:22/04/10 18:04
ファンタジー 連載 怪盗 探偵

Arujino( 東京都練馬区 )

まずは、こんにちは。

練馬区で活動中の、趣味の絵描きです。

小説・脚本なども執筆してます。

【番号なし】 用語・設定解説

【Ⅰ】 連載作品『WonDer BroS』 探偵と怪盗の対決が娯楽化した世界での物語。

【Ⅱ】 短編連作『Story Of Dri(P)Party』

【Ⅲ】 連載作品『根源悪の牧場』 戦争による差別と弾圧に支配された世界での物語。

【Ⅳ】 連載作品『ドライワンダーに遣う』

【001~】 短篇集『short TaleS』
 

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