脳浴剤

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「ノウヨクザイいかがですかー」
いつものティッシュ配りかと思い通り過ぎようとしたら聞いたことのない単語が耳に入った。俺はつい立ち止まってしまった。
「試しにどうぞ」
渡された小さな袋には「脳浴剤」と書いてあった。
「ちょっと変わった入浴剤です。小さいですが、これは人間の——」
スマホが鳴り、俺は「脳浴剤」を受け取りながら電話に出て、その場を後にした。
マンションの自分の家の前まで来ると、隣からガチャと音がした。
「ちょっとあんた、昨日うるさすぎて眠れなかったのよ!」
うるさいババアだ。風呂にでも入ろう。
早速貰った「脳浴剤」を浴槽に入れた。この形といい表面の細かいシワといい、まるで小さな脳みそだ。透明な膜の中に入浴剤が入っているのだろう。お湯に浸かり、「脳浴剤」はプニプニと柔らかくなる。あのババアめ、と思いながらそれを潰した。中から濁った液体が出ると同時に隣から「ぎゃー」と悲鳴が聞こえた。
ホラー
公開:22/04/08 17:00
入浴剤 お風呂 怖い話

雪宮冬馬

日本生まれ日本育ち。年齢約20代。まだまだこれからの男です。
noteでもショートショート書いてます。
よろしくお願いします。

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