シースルードレス

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ふらりと入った店に彼女はいた。ミラーボールが点滅する店内で酔客を相手に上機嫌な彼女。「彼女を」と横にいる女に言うと「あの娘は人気者で無理!」
彼女はAクラス。入社すると秘書室兼経営企画部に配属。最新AI搭載の高級知的ロボット。Eクラスの俺とは比べ物にならない。俺たちは毎日単純作業。仕事を終えるとロボット居酒屋クラブでウサを晴らす。彼女が会社から消えたのは、搭載AIが不正なコピー品だと判明したから。コピー品でも立派に仕事はしていたのだが、こんな場末の店で働いていたとは。客はみんなロボット、俺と同じようなクラスだ。女の子たちもママもみんなロボットだ。店で彼女は色っぽいシースルードレスを着ている。が、あのファイバーは俺たちが工場で作っているケーブル用の光透過性無機ファイバーだ。一目でわかった。彼女はあのファイバーを会社から盗んでドレスを作ったのか。いや、よく見るとあれは精巧なコピー品。さすがだ。
その他
公開:22/04/08 15:49

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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