私の頭の中の“楓”

私の名前は佐藤楓。
秋の訪れと共に、大都会から大自然に囲まれた山の麓に転校する事になった。
家の裏には大きな森林がある。
初めて裸足で紅葉の素晴らしい森林の中を歩いた時のことだった。
芝生に大の字になり、天を見上げると360度、わたしは紅葉に包まれた。
さわやかな風と共に、一枚一枚薄紅に染まった葉が降り注ぐ。
目を閉じて紅葉に“木”を取られているうちに、私の身体が軽くなるのを感じた。
眼を開くと、紅葉達に包まれて一緒に大空を舞っている自分に気が付いた。
私は“風”になったんだ。
何だか嬉しい気持ちになった。
期間限定で、紅葉は私を歓迎してくれた。
嬉し涙が頬を伝い、口に入ってきた。
(あれ、涙がすごく甘い。これは・・・)

葉の切れ込みの違いで、楓も紅葉も同じ仲間であることを後で知った。
さらに、名前のサトウカエデは日本に多い品種の楓で樹液を煮詰めるとメープルシロップがとれると言う。