幽霊の疎開

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 この国の王が、私をどれほど残酷に殺したかは今話すことではありません。それはご想像通りの悲劇で、私はその物語に囚われた存在でした。ですからあなたが城に来て、語った話は驚きでした。
 あなたは説明しました。現在、幽霊は悲劇の歴史の語り手として価値を持ち、国家の保護対象なのだが、今、この国は戦争に巻き込まれている。貴殿のような幽霊は疎開させる、と。
 あなたは胸部を露わにしました。何十本もの針が心臓を貫き刺さっていました。針は細かく震えていました。針に乗り移った幽霊が語っているのです。ぞっとするほど似通っている以外、共通点が何一つない悲劇を。あなたは私を抱くように、己の胸に新しい針を突き立てました。針が共振を始めました。今、大勢の仲間に囲まれ、初めて分かります。私は避けられなかった、無限に反復される、よくある悲劇の物語の一つです。ですが私は、それでもきっと、存在しなくても良かった物語なのです。
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公開:22/04/03 20:00

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