Ⅰ.065 ペルビエの攻防~異文~

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「もう平気なのかい?」
 主人はとても優しく聞いた。
「うん。体力はまだないけど」と、痩せ細った手足を見せて他人事のように笑う少年。着ている寝間着もぶかぶかで、開いた襟元からのぞく胸には大きな手術跡が見えた。
「俺たちが来ることは知ってたのか?」
 一通り事情を聞いた主人は本題へと移った。
「というより、分かったっていうのかな」
 言ってキノワは、枕元から封筒を手に取った。それは紛れもなく蒼猫の予告状であった。
「どうしてそれを?」
 受け取った主人は、中身を確認しながら尋ねた。
「それって御宝の持ち主にも送られるんでしょ。僕の場合は元持ち主だけど」
「…あなたの手元にお戻ししよう」
 主人は最後の部分だけを声に出して読み上げた。『頂戴しよう』と書かれていた我々宛てのものとは、文体が異なっていた。
 読み上げた直後、主人から刺激的で沸々とした匂いを嗅ぎ取った。それは落胆の籠った怒りだった。
ファンタジー
公開:22/04/04 22:07
ファンタジー 連載 怪盗 探偵 宝石

Arujino( 東京都練馬区 )

まずは、こんにちは。

練馬区で活動中の、趣味の絵描きです。

小説・脚本なども執筆してます。

【番号なし】 用語・設定解説

【Ⅰ】 連載作品『WonDer BroS』 探偵と怪盗の対決が娯楽化した世界での物語。

【Ⅱ】 短編連作『Story Of Dri(P)Party』

【Ⅲ】 連載作品『根源悪の牧場』 戦争による差別と弾圧に支配された世界での物語。

【Ⅳ】 連載作品『ドライワンダーに遣う』

【001~】 短篇集『short TaleS』
 

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