吾輩はマフラーである

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今年は例年になく寒波が襲来した。
寒い日々が続くので、主が私を探しウロウロしている。
昨春、私を暑苦しい奴と言って、恩を忘れ押入れの隅に追いやった男である。
私は男に見つからぬ様にと、ダンボールの影に隠れてやった。
でもゴソゴソしながら、やあーこんな所にあったのかと、嬉しそうな声がした。
私は噛み付いてやろうかと思ったが、生憎歯がない。
男は、このマフラーは柔らかくて温かくてお気に入りなんだと言いながら、自分の首に巻いた。
私は首をちょっときつく締めてやると、外は寒く風も強そうだから、これ位が丁度良いかもと、負け惜しみを言って散歩に出かけた。
毎日同じ事を繰り返している内に、桜が咲き始めた。
暫くすると主は私に、これをしていると、暑苦しいなァと言いつつ、私を首から外し周りの綺麗な桜に見とれて散歩をしている。
私も寒い風より、桜花が大好きだ。この際花びらと一緒に散って行く事にしようか!
ファンタジー
公開:22/03/31 09:52

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