愛の証

　数センチほどの男たちがショーケースに並べられている。呼吸や代謝を止めたまま、艶やかな皮膚を輝かせている。店員に勧められ、慎重に男を手に取ったカップルの一人が、手のひらに乗せ、そっと裏返す。
　ヒトは哺乳類で唯一、オスとメスが極端に違う大きさへと成長する。ホルモンの作用によって子宮内で収縮した男は、産後すぐ休眠状態に入り、生殖の条件が整うとヒトのメス、つまり人間と同化し精巣だけ残し吸収される。性的寄生と呼ばれるこの繁殖の仕組みこそ、人間に高度な知能をもたらす決定的な要因となった。生まれてきた男たちを群れで保管し、財産として共有し取引することによって、人間は数や集団生活の規則を発展させてきたのだ。
　知識としては知っていても、実際の男をこうして扱うのは二人とも初めてだ。去勢された男は本当に大切な人との愛の証なのだから。一人が指先で摘み上げると、もう一人の左手薬指にそっと丸めて押し当てる。