握る専門

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変わった寿司が食べられる寿司屋にやってきた。
「初めてなのでおまかせで」
大将が寿司を握る。
「へいお待ち!」
「これは何の軍艦ですか?」
「金目鯛の目玉を焼きました。金目玉焼き軍艦です」
なるほど。確かに変わっている。
「美味しいんですか?」
「さぁ」
「さぁって」
「私は握る専門ですから。食べたことありません」
「はぁ」
「へいお待ち!」
「これは何ですか?」
「マンボウの背ビレの炙りです。隠し味にヒトデのエキスを使っています」
寿司に隠し味。聞いたことがない。
「これもどんな味かわからないんですか?」
「えぇ、握る専門なので」
「あなたねぇ、自分が食べたことのないものを客に出すんですか」
「私は寿司を握るロボットです。ほら」
大将は服をめくり、金属の骨格を見せた。
「AIがその人に合ったネタを算出し、それを提供しているだけです」
日本の食文化に革命が起きようとしているのかもしれない。
その他
公開:22/03/30 17:00
寿司 ロボット AI

雪宮冬馬

日本生まれ日本育ち。年齢約20代。まだまだこれからの男です。
noteでもショートショート書いてます。
よろしくお願いします。

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