エイプリルフール

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「今、何て?」
 将吾が顔面蒼白で公佳と弁護士を見た。
「あなたの娘だって接触して来た子がいるのよ。散々、不誠実な事をして来たんだから当然の結果ね」
「冗談だろう?」
「確かに今日はエイプリルフールね」
「やっぱりそうかよ。弁護士なんてのも嘘なんだろ?」
「本当に心当たりないの?」
「マジなのか? まさか、早苗、いやマナ? それとも美知」
「あなたって人は」
「痛え! 何すんだよ」
 公佳は思い切り将吾の髪の毛をむしり取って袋に詰めた。
「鑑定するのよ。慰謝料と養育費の計算でもしてなさい」
 項垂れる将吾を家に残し外に出ると、公佳は弁護士の腕に手を絡ませた。
「この子との血縁関係をはっきりさせなきゃ」
「お腹の子が将吾さんの子供だとしても気持ちは変わらないよ」
 公佳のお腹を撫でた。
「本当にあいつに隠し子がいたら良いんだけど」
「何とかするよ」
 二人は桜の散る中、軽やかに歩き出す。
その他
公開:22/04/01 20:15
エイプリルフール

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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