消火器の窃盗

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 消火器を盗むのが趣味だ。スリルがあるし、どこかの誰かが非常時に、危険な目に遭う妄想をするのも楽しい。ずっしりとした手応えもいい。気づけば部屋中に何十本も貯まってしまった。
 これだけあれば万一火事になっても大丈夫だ、という油断があった。気がつけば出火。通販の段ボールに引火して火が回る。消火器を実際使うのは初めてなので楽しみだ。ピンを外しレバーを握る。
 出ない。
 よく見ると胴体部分に虫食いのような小さな穴がいくつも空いている。他のも同じ。全部穴が空いている。何十本もあるのに全部使えない。炎に囲まれる。体が焼ける。体内で何かが膨らみ思い切り破裂する。
 粉だ。俺の体の中には失われた消火器の粉が詰まっていて、爆発で火はようやく消し止められた。粉まみれの部屋。俺は爆発四散し跡形も残ってない。畳の上にはミルワームのような幼虫が何百匹も這っていて、消火器の粉を美味そうに食い荒らしていた。
その他
公開:22/04/01 18:04

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