最後に交わした言葉

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先輩と最後に交わした言葉を思い出せないまま、10年の時が過ぎた。
40代半ばの突然死だった。
当直中に呼び出しのコールに応答しないのを不審に思い、看護師が当直室に見に行くとベッド上でうつ伏せの状態で冷たくなっている先輩を発見した。
日勤で、気分が悪いと言って当直室に行ったのが、先輩の最後の姿だったらしい。

10年前に私と先輩が最後に会った時、笑顔で振り返りながら私に何か言っていた。
「・・・」
思い出せない。最近ウォーキングしていると、頭の中に笑顔の彼が無言で語って来る。
笑顔であった事、私が「はい」と返事したのは憶えているのに。
途中でコンビニに立ち寄った。初めて見るポスターを目にした。
ポスターの男性は笑顔で枕を抱えていた。顔が先輩に似ていた。
ポスターの男も何か言いたそうだった。
仕事も大切だが、質の高い睡眠も必要だと言わんばかりに。
先輩もそれを言いたかったのかもしれない。
ファンタジー
公開:22/04/03 07:00

ひまわり広場( 神奈川県川崎市 )

産婦人科専門医/指導医
@sanadakuma
tama-himawari3w.com
身体は日々の食事で出来ている。
妊婦さんにも食事の重要性について情報提供しています。
ダイエット中の方々にも食事・睡眠・運動の重要性について情報発信しています。
自身が「愛着障害」であることに気付き、もう一人の自分と上手に共生しています。
自分が、自分の『安全基地』になることが生きていくための拠り所なのかもしれない。
科学的な視点からの表現も交えて、ショートショートストーリーを作っています。

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