妹との特殊な関係

　「お兄ちゃんお願い、今日だけ恋人のふりして！　彼氏の証拠作りたくて」
　もっと早めに言って欲しい。断る暇もなくデートに出発。そして宇宙人に誘拐された。UFO内は動物のつがいだらけだ。臭い。
　「これ私ら」囁く妹。「地球人カップルの標本ってこと？　やばくない？」
　宇宙人の時点でヤバさカンストしてないか？
　「あの！」妹が宇宙人を呼ぶ。「私ら付き合ってなくて」
　「把握済みだ」日本語が上手い。「兄妹が恋人を演じデートする定型要素の例として君らを採取した」
　「あ、あ……違くて！　更に特殊で……兄には黙ってたけど、実は私たちも宇宙人なんです。昔地球に捨てられて」
　事実だった。知らなかった。秘密とUFOから解放され、妹はカラオケでボカロを熱唱する。きっと可愛い妹からデートに誘われた時点で、宇宙の法則は決定的に乱れていたのだ。俺は壊れた宇宙を盛り上げるため、歌に合わせタンバリンを振り続けた。