魔法のサプリ

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桜がほのかに香る3月下旬。

「お客さん、実はとっておきのサプリが入荷しまして。世界中で流行しているウイルス。このウイルスの陽性反応が楽に手に入ります。」
店主はそう言い残し、私にサプリをくれた。

職場でウイルスに感染し2週間休んでいた同僚がいた。無症状で熱も出なかったとのこと。久しぶりに見たら顔色が良くなっていた。

疲れ切った私には羨ましく思えた。
そうだ、昨日買ったサプリ。たしか副反応も出ないんだよな。

早めに退社して向かった先は検査場。
私はサプリを流し込んだ。結果は陽性。
ホテル療養で快適な生活が始まるとウキウキしていたが体が鉛のように重くダルい。
味覚も匂いも感じない。
40度近い高熱。

2週間後ようやく退院。
そして真っ先にあの店に向かった。

するとお店は閉まっており、一枚の張り紙が貼られていた。

「都合によりしばらく休みます。4月1日 店主」
その他
公開:22/03/24 00:35

弥禄( 関東 )

子供の頃には持っていたもの。大人になると失ってしまう。夢や希望。どうせなれやしない。子供から大人になるにつれ、いつしかネガティブな思考になっていた。ネガティブな思考は感情も貧しくさせる。大人になって何かを感じる。そんな力が少なくなっている気がした。何かを感じ自分の言葉で表現する。400字の中で自分を表現する。そんな世界を作りたい。

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