演壇にて

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アパートの戸をノックする音に出てみると高級スーツの執事みたいな男が立っている。
「お迎えに参りました」
「?」
「さあ、お車に」と急かされて外に出ると黒塗りの大型車。執事男に押されて乗った車は首都高速を音もなく走って立派なホテルに着く。エントランスに俺を迎える十数名の男たち。「さあ、こちらへ」とまたも執事男に引き連れられてホテル内エレベーターに。厚い絨毯の廊下を通って扉が開くと大広間。ステージに押し上げられてみると演台が一つきり。そこに立つと五百人ほどが着席している。一流企業社員か銀行マンばかりと見た。演壇で何か喋らなければいけないらしい。ええいと思いつくままに喋った。
「星飛雄馬は可哀そうな奴です。父一徹にギプスをつけられてボール遊びしかさせてもらえず野球一筋。一徹の夢の被害者、飛雄馬の目は悲しく燃える。高度経済成長時代のビジネスマンの悲哀が彼の瞳の炎なのだ」
会場に万雷の拍手が湧いた。
その他
公開:22/03/23 09:59

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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