死因

運ばれてきた遺体の解剖を進めていると違和感に気付いた。
一見すると脳出血による死亡。そこに何の事件性もないように思える。
だがこの遺体、脳の肥大化が少し異常だった。そこで少しアプローチを変えてみる。
そういう事か…この方、死因は出血性脳卒中ではない。溺死だ。
肥大化した脳は水死体の如くふやけ、ぶよぶよしている。
しかも触ってみるとまだ熱い…どうやら脳がオーバーヒートしていたようだ。死ぬ間際、きっと頭脳労働に疲れ、ネットを見ていたのだろう。
その際、情報の大海であるネットの海で溺れ、どざえもんとなってしまったのだな…早速、警部にこの方の閲覧履歴を調べてもらおう。
これは事件である。何せ、この方の髪、その襟足を見ると誰かに強く引っ張られた形跡がある。故意にネットの海に沈められた可能性がある。
遺体が運び込まれたのが早くて良かったよ。もし、遅れていれば私も事件性を感じる事はなかっただろう。