意気地無しとは言わせない

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「意気地無し」

弱虫で、泣き虫な僕は、いつもそう言われていた。虫に触ったり、お化け屋敷に入ったり、皆が出来ることが出来なくて。
それが悔しくて悲しくて、でもやっぱり怖くてまた泣いてしまって、また、「意気地無し」と言われた。

「…でも、もう意気地無しなんて、言わせないよ」

ボソリと呟く。夜中の街は真っ暗で、でも、街灯や車や、コンビニの光がピカピカしていて、不思議と怖いとは思わなかった。
深呼吸して、足を踏み出す。
身体が、ふわりと浮いて、次の瞬間、僕は、硬い地面の上にいて。

「ほら、たったこれだけじゃないか。何も怖くなんてなかった。僕は意気地無しなんかじゃ、ない、んだ」

赤く染まる地面を眺めながら、僕は声にならない声でそう言った。




「聞いた?○○さんの話」
「飛び降りでしょ。この間こっぴどく叱られてたから」
「それだけで普通死ぬ?○○さんてさぁ…」

「意気地無しだよなぁ」
その他
公開:22/03/26 10:40

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