修復士

モラハラ。パワハラ。セクハラ。数々のハラスメントを日常的に受けていた彼女は心を病み、壊れてしまった。
自殺しようとする彼女を僕が止める。目を離すとすぐ死のうとするから一瞬たりとも気が抜けなかった。監視にも似た毎日に僕も壊れてしまいそうだ。
だから僕は修復士に依頼した。修復士の手にかかれば体の傷も心の傷も直してもらえる。
修復士のおかげで彼女もすっかり元通りになった。彼女は久しぶりに会社へと向かう。
暫くすると「すぐに来て欲しい」と連絡が入った。
何事かと急いで駆けつけるとそこにはいくつもの死体が転がっていた。
彼女は血塗れのバットを手にスッキリした顔をしている。
僕は苦笑いを浮かべると修復士を呼んだ。もう…こいつらを壊すのなら先に言って欲しかった。
「どこまで直しますか？」という修復士の問いに「とりあえず体を元通りに。それと人間関係の修復もお願いします。記憶は直さなくて結構です」と答えた。