ばあちゃん家のトイレ

春休み、パパとママは昔の友人の葬式に行くとかで東京へ行った。パパたちのいない3日間、ぼくはばあちゃん家に預けられた。
ばあちゃんはマナーというのにうるさい。食事のときのいただきますとごちそうさまはもちろん、焼き魚は裏返して食べるなとか舐り箸はダメとかいっぱい言われた。2日目にばあちゃんとデパートに行ってぼくがトイレに行きたくなったときも、「個室に入る前にはきちんとノックしなきゃダメだよ」と口を酸っぱくして言われた。
そして3日目、ぼくはばあちゃん家でアニメを見ていた。ふとトイレに行きたくなったのでばあちゃんのいる居間を通って部屋を出た。
コンコン。
ぼくはトイレの扉をノックをした。家にはぼくとおばあちゃんだけだからノックする必要がなかったと思い、扉を開けようとしたそのときだった。
コンコン。
全身に鳥肌が立った。中からノックを返されたのだ。
以来、ばあちゃん家のトイレを使うことはなかった。