ねばねば

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 朝起きたらみんな抜け殻だった。パパもママもぺしゃんこで部屋に落ちてた。床に緑のねばねばが飛び散ってて、ゆっくり抜け殻に流れ込んでた。いたずらだと思った。でも外に出たら潰れたカラスの周りにねばねばが這ってる。
 抜け殻だけで誰もいない。ネットも使えない。人間も動物も中身がねばねばになろうとしてる。怖くてベッドに潜った。夢だ。でも目が覚めない。
 気づいたら次の日の朝で、パパが心配そうに僕を見守ってた。本当にパパ?
 昨日の話を全部した。パパは僕を膝の上に呼んだ。怖かったね。大丈夫。世界中みんな何かに入れ替わってたら、自分だけ違うはずないじゃないか。
 パパが僕の手を、僕のへそに押し込んだ。手首まで入った。緑色のねばねばが絡みついた。
 力が抜けた。パパは僕を抱きしめた。僕は安心して、甘えて泣いてしまった。僕だけ取り残されたんじゃなかった。みんな一緒だったんだ。
 いつもと同じ日が始まった。
SF
公開:22/03/25 20:00

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