チャンバラマスター

酔っ払って帰ってきた父の手にはなぜかトロフィーが握られていた。
「親父どうしたんだよこれ」
「優勝しちゃったよ、ヒック」
父曰く、今夜チャンバラ大会があり、本来出場予定だった会社の同僚が家庭の事情で出場できなくなったため、急遽代わりに出場するよう電話で頼まれたという。すでに居酒屋に入り浸っていた父は訳もわからずOKの返事をし出場することになったらしい。
「何でこんな酒臭いのに優勝できたんだよ」
「それわぁ俺がきっきたぁいよぉ」
ふらつきながら父はソファに倒れ込みそのまま寝てしまった。直後、父のスマホが鳴った。電話のようだが父は起きない。仕事の連絡かもと思って代わりに出た。
「はい、父の携帯です」
「あ、お父さんの同僚の小林です。今日チャンバラ大会行けなかったんですが、お父さん優勝されたみたいですね。何でも予測不能な足取りで相手を翻弄したのだとか」
なるほど。
ちょっと父がかっこよく見えた。