書く弾頭

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国連安全保障理事会で核弾頭の使用が全面禁止された。
そこで、核保有国は、新たな弾頭の開発に着手することになった。
その矢先、北の国から日本に向かって飛翔体が発射された。日本海に展開中のイージス艦は迎撃しようとミサイルを発射したが、飛翔体には当たらず東京に着弾した。
その瞬間から東京にいる人びとは、パソコンを使用することをやめ、用紙にひたすら書き始めた。飛翔体の正体は、無性に書きたくなる「書く弾頭」だったのだ。
その結果、文字の書きすぎによって手が痛くなり、腱鞘炎になる人が続出した。ただ、飛翔体は未完成だったのか、その影響は数日だった。
日本は、北の国への報復措置として、小型のロケット弾を発射した。いくつかが北の国に着弾した。
しばらくして北の国でショートショートが大流行し、識字率が向上して軍事国家から平和な文化国家へと変貌した。
世界は「ライト(書く)は剣(核弾頭)よりも強し」と称賛した。
その他
公開:22/03/20 08:07
国連安全保障理事会 核弾頭 核保有国 飛翔体 日本海 イージス艦 ミサイル 東京 書く 文字

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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