タナトスの長期休暇

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「もう長くはありません。今夜が峠です。覚悟しておいてください」

医師から告げられたのは、父は今夜死ぬ可能性が高いという事だった。優しい父の死を受け入れる事なんて、自分には出来なかった。もうすぐ死神がやってきて、父を連れて行ってしまう。そんなの嫌だ。もし死神が父を連れていこうとするなら、俺は死神の腕に噛みついてやる。そう決めていた。

父の脈拍が下がった。もう終わりだ。やはりダメか……。俺は涙を流した。
その時、突然目の前に女が現れた。

「私はヴィーナス。愛の女神」
「ヴィーナスがなぜ?死神が来るのでは?」
「タナトスは長期休暇を取っているのです。あなたの父親への愛。感動しました。その病、治してあげましょう」

光に包まれると同時に、父は目を覚ました。検査の結果、病気は治っていた。医者は奇跡だと言って驚いた。

ありがとう。タナトス。
一生、長期休暇でゆっくり休んでくれていいよ。
公開:22/03/22 10:02

富本アキユ( 日本 )

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・SSG投稿作品1500作品突破

・作詞を担当
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