あの時の音色

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「森の音色、川の音色、海の音色、街の音色、砂の音色、太陽の音色、月の音色、虫の音色、小鳥の音色…」
ふと見つけた雑貨店に並んでいるオルゴールを眺めていた。
どれも綺麗な模様と飾りが付いていて、そこにあるだけで充分だとさえ思える。
「どんな、音色なんだろう。」
透明なフィルムに包まれたオルゴールは、鳴らすことはできなかった。
近くに貼られたポップには、丸みのある優しい字で「あなたが恋しいと思う音色を…」と書かれていた。
「恋しい、音色。」
その夜、私は部屋の隅にオルゴールを置いて、ネジを回した。
カチリカチリといくつかの歯車が噛み合う音が落ち着くと、その小さい箱から小鳥のさえずりが聞こえてくる。
翌朝、私の頬には涙の跡と、大好きなあの子と共に空を駆けた記憶が残っていた。
その他
公開:22/04/04 18:00

ハル・レグローブ( 福岡市 )

趣味で昔から物書きをのんびりやってます。
過去に書いたもの、新しく紡ぐ言葉、沢山の言の葉を残していければと思います。
音泉で配信されているインターネットラジオ「月の音色 」の大ファンです。

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