暗号作成機Ⅳ

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4月から転勤のため、引っ越しの準備をしていた。
「これはいらない。この鍋は……」
鍋、か。子どものころ、あの鍋が好きだったなぁ。

言葉を書いた紙をスキャンすると、その言葉を暗号化してくれるこの機械。小さい頃、よく母がこれを使って私に謎を出してたっけ。あの日も。

「今日は鍋よ」
「やったー!何鍋?」
母は紙に何か書いて例のごとく暗号作成機でスキャンした。
「今日はこれよ」
紙にはこう書かれていた。

———
貸した目上足した

ヒント:まずはひらがなにしてみよう。
———

「かしためうえたした?今回はむずかしいなぁ」
「そうねぇ。じゃあこれ見たらわかるかな?」
そう言って母は私に50音表を渡した。
「あ!そういうことか!」
謎を解けた喜びと今日の夕飯に胸が躍る。
ピリッと辛いあの鍋。大人の仲間入りをしたみたいになれるあのキムチ鍋が私は好きだった。
ミステリー・推理
公開:22/03/17 17:19
暗号 暗号作成機 謎解き

雪宮冬馬

日本生まれ日本育ち。年齢約20代。まだまだこれからの男です。
noteでもショートショート書いてます。
よろしくお願いします。

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