壁のラクガキ

そのラクガキを見て、思わず足を止めた。
最初に気付いたのは数日前。壁にラクガキをされているのを見て、酷い事をする奴もいるもんだと思った。
翌日、その壁に目を向けるとラクガキが増えていた。次の日も…さらに次の日も、ラクガキは増えていく。皆が壁を見て足を止めるようになった。それほどにそのラクガキは魅力的でもあった。
私は家の住人にラクガキの事を聞いてみた。あれは一体誰が書いているのか？不快ではないか？気にならないのか？
この家に住む老夫婦は答えてくれた。
「あのラクガキは毎日とある警察官が毎日ストレス発散の為に描いているんです」
それが事実なら大事件だ！何故、止めないんですか？
「止めるなんてとんでもない！あのラクガキには止めてもらっているんですから。だってあの場所、一時停止もないから事故多発区域なんです。絵を見る為に一時停止してくれるのなら、ウチの壁なんて安いものですよ」
納得の理由だった。