学問の盾

「福澤諭吉のことはもちろん知ってるね？」

「それって、一万円札の人ですよね？少しだけではありますが」

教授の眉間には深い皺が刻まれている。それだけ苦労してきたのだろう。

「福澤先生は著書の中で学問、特に実学の重要性を説いている」

「実学というのは法学とか経済学のことですよね？」

「Exactly。だが、そういったものに限らない。大事なのは今学んでることを役立てようとする心だ」

窓越しの夕日が教授の顔を美しく染め上げる。

「君は今英語の勉強に精を出してるそうだね。それだってきっと無駄にはならない」

こめかみを中指で支えて続ける。

「学問は身を助ける。自己を鍛錬する最良の方法なのだよ」

語り終えた教授の顔は厳めしいながらも若々しい青年のようであった。