流星ごろり

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間取りが気に入り見に行った物件には最新の断頭台があった。先週見た物件にはかわいい絞首台があったけれど僕の首には合わなかった。
断頭台に寝そべると、ひとを軽んじてはいけないよ、といつのまにか隣に寝そべった係のひとがつぶやいて、指さす天井には、ひとが本気になればあなたを殺すくらい簡単だからね、と刻まれていた。
断頭台に寝そべって二時間。まっすぐに北を向く断頭台は美しい総檜造り。係のひとは目を閉じてもう喋る気はないようだ。僕は足の爪から子がうまれるのを感じた。断頭台に首をはめると潜在母能が湧くというのは嘘ではないらしい。子は僕の足元で育った。子の隣には係のひとがいて、ひとを軽んじてはいけないよ、と天井を指さす。また二時間が過ぎ、子は子をうんだ。子の子は子の足元で育ち、その子はやがて僕のようなものをうんだ。
突然すべての音が遮断されて僕によく似た火球が転がる床の空。口の中に春のような苦味がある。
公開:22/03/15 12:45

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