オルゴールと子取り

とぼとぼと塾からの帰り道を歩く少年。その顔はとても浮かない。きっとあの子は何の為に勉強しているのか分からないのだろう。
私はオルゴールを取り出すとその音色を少年に聞かせた。
顔を上げる少年。君、私と一緒に来るかい？私が勉強する意味を、楽しさを教えてあげよう。
大丈夫。つまらないと思ったり、嫌だと思ったらいつでも帰っていいから。

うつむき仕事から帰るスーツ姿の若者。その顔もとても浮かない。きっとあの人は何の為に仕事しているのか分からないのだろう。
私はオルゴールを取り出すとその音色を若者に聞かせた。
顔を上げる若者。貴方も、私達と一緒に来るかい？私が仕事する意味を、やりたい仕事を教えてあげよう。
大丈夫。途中で帰ってかまわないし、ついてこなくてもいい。

そうか。来てくれるか。
では君達には私の正体を教えよう。私は子取り、誘拐犯だ。
親の言いなりになっている子を自由にさせるのが私の仕事さ。