夢が見られる芝生

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「この公園には夢を見られる芝生がある」
そう言って、老人は杖をつきながら私をその場所まで案内した。
「ここだ」
目の前に広がる芝生には、緑色が濃くなっている部分が何ヶ所かある。その一つ一つの形はまるで人が仰向けで寝ているようだ。
「この緑色が濃くなっている部分に仰向けで寝れば、君が想像したとおりの夢を見ることができる」
芝生にはすでに何人かが寝ている。老人曰く、日々のストレスから逃げるためにここに来ている人がほとんどだとか。
私は早速芝生に寝た。夢の世界へ、いざ出発。

「あの、この方はどうして芝生の上で寝ているのですか?」
「ここは好きな夢が見られる場所だから、現実の世界が嫌になって逃げたかったんじゃないかな」
「ずっとここに?」
「例えば好きなものを食べる夢であればお腹いっぱいになると目覚める。でもこの人は10年前に『夢の世界へ、いざ出発』と張り切って寝たきり、目を覚ましておらんのだ」
その他
公開:22/03/16 17:00
芝生

雪宮冬馬

日本生まれ日本育ち。年齢約20代。まだまだこれからの男です。
noteでもショートショート書いてます。
よろしくお願いします。

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