太陽神

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 太陽を空に引っ掛けるのが俺の仕事だ。毎朝一人だけ早起きして、川に隠してある太陽を引っ掴むと、竹のはしごを延々昇る。周りは立派な役目だとおだてるが、立派ならそもそも俺なんかにやらせるわけがない。何が嫌かって、まず暑い。
 月を扱う方がずっといい。新月の時なんて、何もしなくても働いたことになる。羨ましい、と当人に話したら、彼女は笑いながら、それなら一度代わりますか、なんてからかう。俺にはこんな仕事しか回ってこないし、できやしないのを知ってる癖に。
 俺は本当はめちゃめちゃにしてやりたい。太陽を西から昇らせたり、途中で投げ捨ててみたい。そうならずに世界が規則正しく、整然と法則に従って動いてるのは、俺が無能で、さらに臆病だからだ。こんな仕事ですら失う勇気がないからだ。でもお前らだって薄々気づいてるんじゃないか? 世界を構成している規則の大部分は、臆病者の気分で作られてるって知ってるんじゃないか?
その他
公開:22/03/12 17:17

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