オルゴールと小鳥

父がトラクターで畑を耕している。掘り返された土に鳥が集まって来た。何しているんだろう？
「土の中にいた虫や植物の種、あとオルゴールを食べているのさ」
オルゴール？
「天然物のオルゴールは土の中で育ち、食べると美しい歌声が手に入るんだ。鳥達が規則的で綺麗な声で鳴くのはオルゴールを食べているからなんだよ」
なら私も食べたい！と土の中に手を突っ込む。
「やめた方がいい。オルゴールには怖い副作用があって、食べ過ぎると体が小さくなって動けなくなるんだ」
これ見て、と父が何かを土の上から拾い上げる。
「この鳥はオルゴールを食べ過ぎて動けなくなったんだ。…ここだけの話、鳩時計なんかで使われる鳥の多くってこうやって作られているんだ」
父の言葉に土から手を離す。
「それじゃ、帰ろうか。今日は臨時収入も多そうだし、美味しいもの食べようね」
笑う父のポケットの中、カチャカチャと小鳥のフィギュアが音を鳴らした。