乗り物成長期

うちは父子家庭。俺と、息子の二人暮しだ。
息子を養う為に、朝から晩まで必死に働いた。不自由な想いはさせなかったと思うけど、寂しい想いはさせたと思う。一緒に遊んでやれなかったし、学校の行事にはあまり参加出来なかった。
成長記録の写真だって、数える程しかない。
それでも、見る度に息子の成長を感じるものもある。

ボロボロになった三輪車。

壊れた補助輪と、乗り倒された自転車。

新聞配達のアルバイトの為に用意した単車。

まだ比較的新しいマウンテンバイク。

俺の車の隣にある、中古車。

写真は無いけれど、アルバムは無いけれど、これらを見るだけで、息子の成長をひしひしと感じる。

「…お？」

ピロンとスマホが鳴って、息子から写真が送られてきた。それを見て、また息子の成長を感じる。

「大きくなったなぁ」

晴れやかな空の下で、白い制服を着た息子は、大きなジャンボジェット機の前で敬礼していた。