壁に耳あり私に目あり

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「いたっ…」
指先を見ると、また切れている。鞄から絆創膏を取り出して、切れた箇所に貼った。
両手指は、絆創膏だらけ。
「…いつになれば治るかな」
親や友人に、「病院行けば?」と心配される。けれど、そういう訳には行かなかった。
病院に行ったからと言って、どうにか出来る問題では無かった。
「……………」
部屋で、ぺりぺりと絆創膏を1枚剥がす。指の切れ目がズキリと痛み、次の瞬間、ぱっくりと裂けた。
けれど、血は流れない。
そこには、血ではない、別のものがあった。
「病院なんか、行けるわけないじゃん」
それが表れだしたのは、出来心から、学校近くの小さな商店で万引きしたあの日から。
それから、何かを盗む度に、それは増えていく。
「止めれば治るの…?」
でも、今更謝罪することは怖くて、躊躇われて。
そう考えると、また、ぎょろりとその目が動いた。

私は今日も、私自身の百の目に、私の罪を見つめられる。
ホラー
公開:22/03/13 10:01

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