存在しない漫画
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存在しない漫画が好きだ。存在しないので、現実では読めない。読めるのは夢の中だけ。亡くなった祖父の身なりを出棺前に整えるため訪れた理髪店の本棚、歴史的な積雪で凍りついた渋谷の大型書店に平積みになった新刊、たいていベテラン作家の知られざる作品、久々の新刊、そうした体でこっそりと、存在しない作品は並んでいる。売り物でなかったり、お金が足りなかったり、買えても夢が覚めれば消えてしまう。ページを開く。見たこともない展開、独自の域に達した作風。
幼い頃、本屋で背表紙だけを眺めていた漫画、本の最終ページに広告だけで姿を見せてた漫画は、みんな夢の漫画の親戚だった。本棚やリストの中で身を寄せ合い、読んでみるまで存在しない漫画たち。お小遣いを貯めて購入し、部屋の本棚に並べた後でも、本はまだどこかそわそわした様子で、部屋の電気を消すと、ようやく落ち着いたのか、そっと、僕らの夢へと繁殖のため滑り込んでゆく。
幼い頃、本屋で背表紙だけを眺めていた漫画、本の最終ページに広告だけで姿を見せてた漫画は、みんな夢の漫画の親戚だった。本棚やリストの中で身を寄せ合い、読んでみるまで存在しない漫画たち。お小遣いを貯めて購入し、部屋の本棚に並べた後でも、本はまだどこかそわそわした様子で、部屋の電気を消すと、ようやく落ち着いたのか、そっと、僕らの夢へと繁殖のため滑り込んでゆく。
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公開:22/03/10 18:00
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