オルゴールと小鳥

民間で作られた小型の人工衛星・ことり。
宇宙から人々に音楽を届けたいというモチーフのもと作られたそれは１０年ほど地上に住む人々を楽しませた。
宙からオルゴールの音色が降り注いでくるんだ。人々は空を見上げ、音の出所を探ろうとした。
それがことりの仕業であると分かると人々は空を見上げ、ことりを探そうとした。耳を澄ませ、音を楽しむ人々がいた。
落ち込み、地面ばかりを見ていた人々に僅かばかりの元気を与えられる１０年だった。
だが人々はことりから流れる音楽に飽きてしまった。もう誰も空を見上げようとしない。
ことりもまた、２０年経つ頃には老朽化が進み、音楽が流せなくなった。
周りを見れば何世代も先を行く技術の人工衛星。小型で不格好なことりは廃棄を余儀なくされた。
ことりの処分が始まった。大気圏に突入したことりは火の尾を引いて空を駆ける。
その光景はまるで”よだかの星”のようだ、と人々の目に焼き付いた。