オルゴールと小鳥

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祖父の家にはとても珍しい古時計がある。
この時計、電池を使わない。その代わり毎日ネジ巻きを必要とする。
それだけなら普通の古時計と同じだろう。ここからが珍しい。
この時計、ネジ巻き時になると時計の上部から鳩時計みたく小鳥が顔を出す。
小鳥は餌をねだるように口を開け、ネジ巻きを要求してくる。その仕草が好きで昔からネジ巻きは私の仕事だった。
ネジを巻くとそのお礼にと言わんばかりに小鳥は美しい声で歌う。内蔵されたオルゴールが1時間毎に音楽を奏でる。
時計の下部には12本のシリンダケース。1時間ごとに違う音楽が流れる。
祖父はまるでジュークボックスのレコードを扱うかのように毎日シリンダを取り替えていた。その様子を幼い私は隣で眺めていた。
今も祖父の古時計は1時間毎に美しいオルゴールの音色を聞かせてくれる。
ネジを巻きたいとねだる息子。だが餌付けされている小鳥は私の手から出ないとネジを受け取らない。
公開:22/03/09 20:47

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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