おシャベル

シングルマザーの私の娘がシャベルを相手に話しかけている。
いくらコロナで友達に会えず、私も忙しくて娘を家に一人にしがちとはいえ、これは良くない。娘からシャベルを取り上げた。
『奥さん、ちょっと待って下さい！』
シャベルから声がした。何これ？どうなってるの？
『ウチはお喋りの出来るシャベル、おシャベルです。娘さんの友達やらせてもらっています』
関西人っぽいイントネーションに唖然とする。
『奥さん。娘さんはよぅできたお子さんですな。お母さんに苦労かけんようにって寂しいって気持ちを必死に庭に埋めて隠してますわ。でもほれ、見て下さい。その気持ちが庭で美しい花になってるやろ？奥さん。もうちょっと娘さんと一緒に居てあげられまへんか？』
庭を見て、娘を見る。少し困ったような表情を浮かべる娘。
…貴方ってお節介なシャベルなのね。
『ウチはシャベルさかい、何かを掘り返すのも、溝を埋めるのも得意なんですわ』