植物人間

彼女が面白いものを見せてくれるというので家に行った。ベランダを案内されると、そこにはプランターがたくさん置かれていた。
「今ね、植物人間を育ててるの。この種を撒くと人間ができるのよ。こっちが怒る用で、こっちが褒める用。で、こっちがクラシック用で、こっちがヘビメタ用」
彼女曰く、毎日水を上げる際、怒りの言葉をかけるプランターと褒め言葉をかけるプランター、クラシック音楽を聴かせるプランターとヘビメタ系音楽を聴かせるプランターがあり、それぞれでどんな人間ができあがるのか実験しているのだとか。彼女の実験好きは相変わらずだ。
彼女がプランターを覗いたとき、風が吹いた。その瞬間、髪がふわっと上がった。
僕は見てしまった。彼女の頭から双葉が生えているのを。
「えっ、もしかして君も……」
「あぁ、見えちゃった？そ、私も植物人間。私の場合は、米村でんじろう先生の実験動画を見せられながら育てられたみたいよ」